胆嚢結石と、MRI
なんだか、落ち込んでいる。
気づくと浮かない顔をしている。
あぁ、いやだいやだ。なんでこんな辛気臭いの、わたし。どうしちゃったのさ。
胆嚢に2cmの石とポリープの疑いで、かかりつけの病院から紹介状をもらい、大病院で検査となった。
CTを撮った結果、ポリープではないことがわかったのだが、2cmの石はでかいので
今じゃなくても、将来的には取った方がいいとのことなのだが・・・
かかりつけの病院の先生も、大病院の先生も、「いつかはとったほうがいいけど、どうする?」と
あくまでわたしの意志で決めよという感じなのだ。
石をどうにかするには、2通りある。
・石を溶かす薬を飲む
・胆嚢を手術でとる
先生「ただ、薬はものすごく時間がかかるし、飲めば絶対石がなくなるわけでもない」
ぬん「それは・・・メリットがあまりないということですかね」
先生「そうなんだよね」
自分で決めると言われても・・・
なにをどう決めたらベストなのかがわからない。
ただ、歳をとってからだと、体力の問題やら合併症やら、全身麻酔がたいへんやら
いろいろあるから、若いうちがいいのはたしからしい。
石をそのまんま残して、騙し騙し暮らす人もいる。
年に数回痛みが出て、夜中に痛さと戦った日を思うと、今の勢いがあるうちに取ったほうが
よい気がしてきて、「取ります」と返事をした。
「わかりました、じゃあ手術するためにいろいろ検査があるので、今日これからやります」
・尿検査
・心電図
・血液検査
・肺活量検査
ここまで、トントンと進んだ。
最後にMRIをやるために、その部屋に通された。
白とベージュが基調とした綺麗で優しい感じの部屋。
その真ん中にドカンとドーナッツのような変な機械がある。
わたしはMRIという言葉は知っていたが、実際に機械を見るのも、検査を受けるのも初めてだった。
金属のものを身につけてないか、厳重にチェックしたのち
ベッドに横になるように言われた。
言われるがまま、横になった。フカフカで気持ち良い。
布団みたいな重たいカバーを体に乗せられ、頭にヘッドホンが付けられた。
30分くらいかかること、ちょっと大きな音がなること、
息を吸ったり止めたりするアナウンスが流れるので指示通りにすることなどを聞かされ
結構長いなぁなんてボヤッと聞いていた。
「なにかあったらこのブザーを鳴らしてくださいね」と
看護婦さんが、押すと音が鳴るブザーを持たせてくれた。
ベッドが動いた。ドーナツの中に吸い込まれていく。
ドーナツの中で止まった。顔と天井の間、10cmくらい。
ゴンガンゴンゴンゴン!!!と、デカめの聞いたことない音が響く。
・・・
・・・
急に脂汗が吹き出した。手が汗でびちょびちょになった。
どうしよう、どうしたんだ、なにがどうしたのがわからないけど
もうどうしようもないくらい、なにかが怖い、恐ろしい
ちょっとだけ動かせる足がジッとできなくなってきた
こわい、こわい、出して!ここから出してほしい!
わたしは、自分は最強だと思っていた。
今まで生きてきて、どうしようもない恐怖など、これといって無かった。
いつも、どんなときもなんとかなってきた。
だから、持たされたブザーなんか目もくれてなかった。
でも、今、どうしようもなく助けて欲しくて、苦しくて、怖くて
こんな感情を抱いたことがなくて、今すぐ助けてほしい。
誰か助けて、なんて言ったことなくて、ブザーを素直に押せない。
オトナなのに、まだ始まったばかりなのに、押したら恥ずかしい・・・
という理性もあっという間にブッ飛んで、ブザーをぎゅっと握った。
「ビーーーーッ」と音が鳴ってすぐに「どうしました!?」と
技師さんと、看護婦さんが飛んできて、ドーナツからあっという間に出してくれた。
自分がわからなかった。
「ご、ごめんなさい。脂汗が吹き出してしまって・・・怖くて・・・」
しどろもどろになってしまった。
技師さんと、看護婦さんは優しかった。無理しなくていいんだからね、
初めてだとびっくりしちゃいますよね、と優しい言葉をたくさんかけてくれた。
わたしは、ドーナツをよーく見て、ここにはいって、音が鳴って、と
これから起こることをもう一度反芻して、頭でシミュレーションして、もう一回頑張ることにした。
そして、なんとか30分耐え抜くことができた。
全ての検査を終え、待っていてくれたオットの元に急いで戻った。
オットはわたしの憔悴した顔をみて
「ど、ど、どうしたんだい!!!!オジサンみたいになっちゃってるじゃないか!!!」
「へんなドーナツみたいな機械に入って、出てきたらオジサンになってたんだ・・・」
オバサンだったはずなのに、恐怖でオジサンになってしまうなんて。
ほんとうに怖かった。恐ろしかった。頭がおかしくなりそうだった。
40年生きてきて、まだ知らない自分がいた。
手術は、お腹に数カ所、穴をあける。
だいたい5日間くらい入院になるそうだ。
わたしは、先のことを考えて手術すると決めたけれど、
お腹に傷が残ることを本当になんとも思わないんだろうか。
1cmくらいの傷が数カ所。そりゃあ夫以外、誰もみることないけれど、
やっぱり身体に傷があることに悲しい気持ちになったりするんだろうか。
MRIに入るまで、傷が多少残ってもいいかって思ってた。
だけど、MRIの中で自分が知らない自分がいたから、
今の自分の気持ちと全く違う気持ちになるんじゃないかってことが怖い。
自分で手術するって決めたのに、絶対今すぐやれって先生に言われたわけじゃないのに、
コトがなんとなく進んでいて、今、自分の気持ちが置いてけぼりになってる気がする。
恐怖に支配されて、うろたえている自分がいたことを
まだ受け止めきれていないのかもしれない。
オットはただ静かに抱きしめてくれた。
オジサンが少しずつ元に戻って、なんとか元のぬんぬんになった。
危なかった。ひとりだったらどうするつもりだったんだ。
まだ微妙に立ち直っていない。
生きるって、ほんと、タイヘンだよね。
(*´︶`*)ノ”したっけね!
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