はじめての一目惚れ
時は遡ること26年前。当時、中学3年生だったわたし。
サッカー部、バスケ部、吹奏楽部。人気の部活の陰で目立たない演劇部。
当時、演劇ってなんか暗くて、あんまり人気がなくて、なんとなーく学生にはイマイチ、ピンとこないものであった。
が、しかし、そういった雰囲気を完全にブチ壊して、新しい世界を作った劇団があった。
TEAM-NACS(現在はハイフンないんだってね☆)、北海学園大学の演劇部の部員で結成されたユニットである。その一員だった大泉さんはまさかの全国区の俳優になって、他の皆さんもテレビで活躍するようになって、当時、大学に演劇を観に足繁く通っていた私としてはそれはもう驚くばかりなのだった。
「演劇ってなんか面白い!」と、とっつきやすくしてくれたチームだと、今も思っている。
その影響もあってなのか、NACS以外にも魅力的な劇団はたくさんあった。
とある演劇を、幼馴染の子と観に行ったわたし。その子の家庭教師さんが出演しているから観にいこうと誘われたのである。
気軽に観にいったのだけど、ある劇団員さんに、一瞬で心を奪われてしまった。
楽日であったので、出口で劇団員さんがズラリと並んで、挨拶や握手をしてくれる。
わたしは、彼と握手して心臓が爆発するかと思った。
そのことを幼馴染に話すと、後日信じられない朗報が入っただった。
なんと、カテキョの先生の仲良しであるというではないですか!!!
その日からせっせと彼の出演する演劇はすべてチェックして、見に行くこととなった。
カテキョパワーをふんだんに使わせていただき、「仲間(カテキョ)の教え子の幼馴染」という謎の立ち位置で、なんやかんや公演が終わったらちょっとおしゃべりしたり、顔を寄せ合ってツーショットの写真を撮ったり、プロフィール帳を交換して電話番号をゲットしたり、ふつうのファンより距離が近いと自負していた。
わたしはもう毎日毎日彼のことでアタマが爆発しそうで、写真を眺めてはニヤニヤし、学校でも恋バナをし、体育祭には彼の名前を自分の腕にでっかくマジックで書いてドッチボールのキャプテンをやっていた。
大チャンスがやってきた
そんなこんなで、バレンタインが近づいてきた。もうこれは言うしかない。
好きですって言うしかない。
ここでカテキョのパワーの真髄が発揮された。
なんと、ふたりで会えるようにセッティングしてくれたのである!!!
なんでどうなって、そうなったのか細かいことは忘れたけれど、
2月14日。札幌のテレビ塔前。
わたしは彼と待ち合わせて、タイタニックを観に行くことになっていた。
人生で初めてのデート。大好きな人と。
映画までまだ時間があるからとディノス(ゲームセンター。札幌っ子、わかるよね!笑)でウロウロしていたら、UFOキャッチャーで「トムとジェリー」のジェリーの顔のキーホルダーがあった。
「これ、かわいい!」とわたしが言うと、彼が「よし、俺、とってあげる!」と!
なかなか取れないジェリー。「あーもうちょっと!」「おしい!」とか言いながら
めっちゃ一生懸命やってくれて。
「やったーーー!!とれたーーーー!!」といって
彼は満面の笑みでジェリーを渡して、わたしを抱きしめた!!!!!
ほんの数秒のできごと。初めてすぎて、なにが起こったのかわかんなくて
背の高い彼の胸が目の前にぴったりくっついてて、嬉しくて、目がまんまるになって、でも背中に自分も手を回した!笑
しかし今ならわかる。
これは大学生による単なる「ウェイ!」のノリであると。
おっと、台無しなこと言っちゃったわ!
中学生にとっては、あまりにも刺激的であった。
そのあとタイタニックを観たんだけど、彼のことばっかで映画はアタマに入るわけもなく。
映画を観たら、暗くなってた。冬は日が短いから。
今日のメイン。バレンタインのチョコを渡す!
当然手作り!ラッピングもめっっちゃ凝ってるから!最高にかわいくできて、自信作だから!
「あの、これ・・・・」といって、バッグをガサゴソするわたし。
ガサゴソ。ガソゴソガソゴソ・・・
ガサゴソガソゴソガサガサゴソゴソ!!!????
は?忘れた?
忘れたのである。
信じられん。なんで?は?なんで?
「わ、わ、忘れちゃった・・・!家に・・・!」
爆笑する彼。
つられて笑うわたし。
「暗いから、送るよ。そのついでにお家まで取りに行こう?」
神なのか?
地下鉄に乗って、数駅で降りて。
そこから徒歩で15分。雪がちらほら降っていた。
「壊れるほ〜どあいーしても〜 さんぶんのいちーもつたーわらなーい」
彼が口づさんでいる。「1/3の純情な感情」当時はやっていた曲。
彼の生歌を聴いて悦。そして、あいしてる、ってなんか、その言葉が
オトナっぽくて、ちょっと照れくさくて、ドキドキした。
家について、「ちょっと待ってて!」
急いで、走って部屋に戻った。やっぱりあったよ、このクソバカ!
自分が悪いのに、顔が般若になった。
般若はとうぜん隠して、いそいそと戻り、
ばくばくの心臓でエイって渡したんだ。
「好きです、つきあってください」
言った!じぶんちの前で!言ったぞ!
彼は優しい笑顔で、
「ありがとう。少し考える時間が欲しいな」
わたしは秒殺されなかったことに安堵した。
彼は、再度ありがとうーー!と言って、さわやかに雪降る道を帰っていった。
今日いちにち起こった出来事を詳細に思い起こしてはリフレインしまくる日々が始まった。
いつ、告白のお返事が聞けるんだろう。
これは脈があるのか、ないのか・・・
いや、でも送ってくれたし!それよりなにより、ギュッてしたし、
もしかしたらもしかするのでは!!!
浮かれ散らかして、彼からの返事を待っていたのです。
続く!
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